はりねずみ

本当に何でもなく涙が溢れてくる。
別に何か傷つく事があったわけでも、
悲しい事があったわけでも、
苦しい事があったわけでも、
胸が潰れるような事がったわけでもない・・・。
なのに、なんでなんだろう。
こんなにも涙がとまらない。

ずっと壁を作ってきた。
ある一定の所からの進入を頑なに拒んで、
自分という人間を保ってきた。
恐かった。
自分が裸になるようで、
離れたときの寂しさに、
気持ちが分からなくなった時に、
一人になったときの苦しさに、
耐えられる自信がなかったから。

それなら、
自分から近づかなければいい。
自分から距離を取ればいい。
そうすれば傷つく事はないのだから・・・。

誰も私が本当は弱いという事を知らない。
いつも笑顔で、
はっきり言いたいことを言う。
だけど、それは自分を守るための武器。
誰からも傷つけられないように、
誰からも攻撃を受けないように、
自分を奮い立たせ、
『強さ』という鎧をまとう。

一人が恐くて、
夜が恐くて、
眠れないとき、
自分の頬を伝うものに気づく。
自分自身が鎧を脱げず、
苦しんでいる。
『私を出して』
『本当の私を外に出させて』
そう叫んでいる。

今なら素直に言えると思う。
本当の気持ちを・・・。
自分の想いを、
まっすぐに、
ただ、正直に・・・。